まるやまさんの感想、レビュー
まるやま
取引先も上司もいざとなったら力づくで葬れるという謎の全能感(笑)。自己肯定感も高まり、性格も穏やかになり、タンパク食でダイエット効果もある。筋トレで人生を変える。
Testosterone/久保孝史
文響社
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生々しい現代の性的表現には虫唾が走る。正しい愛などなく、それぞれのかたちで愛が存在し人生が存在する。善し悪しはない。金井神父に関わる女性の愛や性的関係を通して感じる感傷を通して、金井神父の謎(亡き妹への愛)に迫る。現代のLGBTへの考えの多様性が色濃く反映。
島本 理生
自分に正直な人生を生きればよかった、働きすぎなければよかった、思い切って自分の気持ちを伝えればよかった、友人と連絡を取り続ければよかった、幸せを諦めなければよかった。終末期の患者のヘルパーの経験を通して著者ブロニーが学んだことを記した本書。お金や物に執着した人はおらず、愛を持って他人に接することが全ての帰着点だと感じた。他人から見ればどんなに不幸な人生でも、本人が幸せだと感じていればそれはもう幸せであり、自分の中の感情や愛情のコントロールが全てだと思う。ブロニーが看取った全ての先人たちに敬愛を。
ブロニー・ウェア/仁木めぐみ
全ての物語が繋がるのがラスト1ページという高度な"湊かなえ作品"だった。最後の回収が余りにも軽薄だったため、今までの登場人物が全て千春が実話を元に記したベストセラーの内容であったことを理解するのに時間を要した。阪神淡路大震災を題材にしており、読み終わりのスッキリ感もなく得たものも無く、かなり難しい作品だった。
湊 かなえ
独ソ戦におけるソ連赤軍女性狙撃手セラフィマの物語。狙撃手となるきっかけから始まり、精錬な狙撃手になるまで、彼女のあらゆる変化を段階的に描き、彼女を取り巻く環境における悲しみ、苦しみ、信頼、緊張などをドラマチックに激情的に記した。事実の記載を引用しているので、フィクションでありながらノンフィクションのような臨場感があり、戦争を経験した女性たちの異次元の思考を共有できる。戦争という環境に順応し蝕まれてしまった女性達の達観した思考を物語における一種の"落ち"として使用する高度な文学に感嘆した。タイトルの「敵を撃て」に関して、セラフィマにとっての"敵"が単純に母を殺したドイツ兵だけを表すだけでなく、広義的な意味でのドイツ軍全体から女性を侮蔑する自軍兵、もとい最終的に婚約者であるミハイルにまでかかっており、単純なタイトルにも深い意味が隠されている。かなりページ数のある作品だが、どのページにおいてもダレるところがなく、最初から最後までのめり込んだ。マイナス点を挙げるとすれば、一部の仲間を失った悲しみはあるものの、悪い意味でフラグが立っていたというか、感情移入の少ない人物だけが亡くなったように思えた。また、ラストの締め方があまりにも希望的すぎて、中盤が悲惨であったぶん拍子抜けではあった。が、総じてそれをもぶっ飛ばすような素晴らしい作品。強い女性を描いた作品は個人的好みであるので、イリーナ率いる狙撃兵部隊への敬愛の念が絶えない。胸を張って人にお薦めしたい最高の作品。
逢坂 冬馬