Bookstand
Bookstand
ワーカーズ・ダイジェスト

ワーカーズ・ダイジェスト

津村記久子

集英社

Amazonで詳細を見る

作品紹介、あらすじ

32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間、ふたりは別々に、けれどどこかで繋がりを感じながら生きていくー。頑張るあなたに贈る、遠距離“共感”物語。

感想やレビュー

ああやっぱりこの人はうまいな、と思う。 仕事をしていて、また友達との関係性のなかで感じるざらっとした出来事や感情、そこにぶち当たったときに大人としてどう対処するか、うまく流していくのか、32歳という年齢は若いようで、その実社会人に出て10年経っているのである程度社会のことはわかっている。それを経験として熟成していくのはたぶんこの年齢ぐらいからなのだろうと思う。若いころには見えなかったもの、ある程度責任を持つからこそ経験すること、そのいくつもの事象に疲労は蓄積していくけれど、つかの間の大切な誰かとのやりとりや、趣味に没頭することなどで流していく。綺麗に流れるわけではなく、水底に砂が残るようにいくらかダメージを残しながら。でもそのダメージが蓄積されてその人を形作っていると思う。疲労がたまったその顔で、その人はこれからも人生を歩んでいくのだろう。

App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう