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武道館

武道館

朝井 リョウ

文藝春秋

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作品紹介、あらすじ

「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。さまざまな手段で人気と知名度を上げるが、ある出来事がグループの存続を危うくする。恋愛禁止、炎上、特典商法、握手会、スルースキル…“アイドル”を取り巻く様々な言葉や現象から、現代を生きる人々の心の形を描き表した長編小説。

感想やレビュー

小さい頃から踊ることが好きで、アイドルグループ「NEXT YOU」のメンバーの愛子。 しかし、現実は外から見える華やかな部分だけでなく、炎上、恋愛禁止と厳しいものばかりだった。 印象に残ったフレーズ 「怒るから、その人がどういう人間なのか、何が許せない人なのかって、わかるじゃん。それがわかるから、その後もっともっと、仲良くなれたりするじゃん」 「怒る」ということに対して、そういう捉え方もあるのか、と納得した。 愛子が存在する「アイドル」の世界では、匿名での誹謗中傷、盗撮、執拗な過去の詮索など、「普通の人ならば」怒って当然のことに、黙ってスルーする、煽り耐性をつけることが美徳とされている。 でも愛子は、それが許せなかったのだと思う。だから、こんな風にメンバーに向かって「なんで怒らないの」と責めることができた… これを読んで、私は「アイドルも普通の人間なんだ」と思った。愛子のメンバー、鶴井るりかは、「アイドルは夢を見させてあげなきゃいけないんだから、人間らしい部分なんて見せたらダメ」と言っている。確かにそれも一つの考え方だと思う。でも、愛子や、同じメンバーの碧が言ったように、私は「アイドルも人間」であってほしい。「社会に現れた異物」なんかであってほしくない。 それには、私たち受け止める側の努力が必要だと思う。私自身も、知っている人の熱愛、炎上の記事が出ても、目を逸らすばかりだったと思う。でも本当は、アイドルが恋愛しただけでなぜ叩かれなければいけないのか、疑問だった。疑問だったが、解決せずに傍観者の立場を貫いていたから、もし人に話を振られたとき、安易に、決定的に傷付けるような言葉を放ってしまうのではないかと思う。 だからこれから、そういう記事が出たら(出ないのが1番だけど)、こうやって小説を考察するように、記事もじっくり吟味して、自分なりの意見を持ってみようと思う。

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