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残酷依存症

残酷依存症

櫛木理宇

幻冬舎

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作品紹介、あらすじ

サークル仲間の三人が何者かに監禁される。犯人は彼らの友情を試すかのような指令を次々と下す。互いの家族構成を話せ、爪を剥がせ、目を潰せ。要求は次第にエスカレートし、リーダー格の航平、金持ちでイケメンの匠、お調子者の渉太の関係性に変化が起きる。さらに葬ったはずの罪が暴かれていき…。殺るか殺られるかのデスゲームが今始まる。

感想やレビュー

人間の私と女の私は別に存在するのだ。 最初、訳もわからない状態で拷問される男子大学生を可哀想に思っていたのは『人間』の私だった。 男とか女とか関係なく、同種族として同じ社会に生きる者として憐れんだ。 だが、彼等が悪質な強姦を繰り返す犯罪組織化されたサークルの中心人物だと判明してからは私は彼等への拷問がまだ足りないとさえ感じる様になってしまう。 許してくれと言いながらも、的外れな反省し顔しない男子大学生に知らず知らず唇から音が溢れた。 「許すわけないじゃん」 『人間』の私を押し退けて『女』の私が吠えていた。 この男共の尊厳を完膚なきまでに踏み躙ってほしい、私達女が、ただ女に産まれただけで社会から男の欲望を恐れ夜道を歩けない。 女だという理由で才能を発揮できない社会は日本には色濃く残っている。 その上、彼等は心が男性で肉体が女性である少女を犯し、その動画をネット上にばら撒いた。 男として生きたい少年の心を、女として踏み躙った。 『人間』の私が首を傾げた。 善とは何だろう? 前作ではか弱い子供をターゲットに狙い犯し殺す浜真千代は明確な悪だった。 しかし、今作での彼女は自らの復讐のついでに弱者の復讐も成し遂げ、道哉(ミキ)の祖母に仇を討った事を告げている。 あの善良そうな祖母が歓喜の笑い声をあげた瞬間、私の心にも喝采が起こったのは事実だ。 疑問は無くならずとも、胸に引っかかっているものはあれど、私は男達への恐怖を抱いて生きる『女』の1人として蹂躙されてきた性別の持ち主として真千代に喝采を贈ったのだ。 『喝采を!我らが憎悪に喝采を!』 今も『人間』としては真千代の所業は許せない悪行だと思う。 だが、それ以上に『女』として思うのはあんなものでは生温いという事だ。 男子大学生を犯して精神崩壊寸前まで追い込んでから、去勢して『男』としての尊厳も未来も全て踏み躙ってやりたい。そんな暴力的な感情が読了後数日が経っても私の胸に渦巻いている。 私はこんなにも男という生き物を憎悪しているのか? それとも、私の中に積み重ねられた女達の(ミトコンドリアは母親由来だ)ずっとずっと私の中には母の、祖母の、曽祖母のさらに母親達…女達の咆哮が刻まれているのではないだろうか?

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