ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして２０年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。

猫鳴り

脳細胞までも凍らす、恐怖の連続…ホラー・シーンに新たな局面を拓いた作家６人が、それぞれの“怖さ”を突きつめ、描きこんだホラー小説の競作。

ゆがんだ闇

新聞記者を辞めた「私」は、御溝と名乗る奇妙な男から秘薬ニスイについて執筆を依頼されるが、取材相手の死など不吉な体験をする。実は、御溝は死者の言葉を呼び返そうとしていたのだ。庭を覆い隠す木賊のように「私」の不安は増殖してゆく。言葉の呪術的な力を駆使した「とくさ」（第十一回日本ホラー小説大賞短編賞佳作）他、新感覚ホラー四篇。

とくさ

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしないー。地図にも載っていない隠れ里「穏」で暮らす少年・賢也には、ある秘密があったー。異界の渡り鳥、外界との境界を守る闇番、不死身の怪物・トバムネキなどが跋扈する壮大で叙情的な世界観と、静謐で透明感のある筆致で、読者を“ここではないどこか”へ連れ去る鬼才・恒川光太郎、入魂の長編ホラーファンタジー。文庫化にあたり新たに１章を加筆した完全版。

LTさんの感想、レビュー

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雷の季節の終わりに