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南京路に花吹雪(1)

南京路に花吹雪(1)

森川久美

白泉社

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感想やレビュー

#南京路に花吹雪 全4巻 #森川久美  白泉社 1982年発売 #再読本 ふと寂しさを感じさせる黄(コウ)の切なげな表情が、ずっと忘れられなかった。 『南京路に花吹雪』は前作『蘇州夜曲』から2年後の上海を舞台に、戦争を阻止しようと、特命機関で働く男達のハードボイルド物語。二重スパイ、裏切り、無力感、哀しみ。甘ったるさのない世界に、シビレます。 当時、美少年が主人公の少女漫画が増えてきた頃でした。難解で最初はよく分からなかったけれど、何回か読むうちにドドーンときました。地味でも味のある傑作だと思います。 メインキャラは地下組織のリーダーとなった本郷と、共に活動する日本と中国のハーフの美少年・黄。 特命を帯びたふたりは、お互いに大切な存在になっていく。でも、時代の波に呑み込まれ立場が微妙に食い違ってゆく…。 黄はハーフであるが故の苦悩と自己嫌悪に苦しむ。 黄がしだいにすさんでいく姿を、理屈ではなく少女漫画ならではの繊細なかげりのある瞳で表すのが、またいいんです。 一匹狼の黄だけど、本当は寂しがり屋で本郷のことも好きなのよね。 全面戦争へと突入していく日本軍と中国軍。上海の混沌とした街並み、登場人物たちの個性と心理描写がみごとに描かれています。アクションシーンの銃声音もアナログ感がにじみ出て迫力があります。 お互いに好きだったのに、なぜ戦わなくてはならないのかーー!! 歯がゆくて仕方がない。 中国人でありたいと願った黄。 共に追いかけた夢は破れ やるせない気持ちばかりが心に残りました。 第二次世界大戦へ突入し、戦争終結をもって彼らの物語も終わる。 こんな時代が終わったら また笑って会えるだろう…黄? (涙涙涙) 追伸 去年は1945シリーズ/尾上与一先生の小説で戦争ものを読んだのですか、森川漫画でまた読むことになるとは(涙) 南京路に花吹雪には、抗日運動VS日本軍の地下組織VS軍需利益を狙い戦争を起こそうとする財閥の対立する3つの存在があった。 個人的には、財閥傘下のシンガー銀行のコールド・ブラッド・ジョーも好きでした。絵に描いたような美しき冷酷な紳士スパイ。

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